「私」が見えない自己PRはダメ
前回の記事では、コピペ可能な自己PRはダメな自己PRであると説明しました。
コピペ可能ということは、「私」が不在なPRであるということです。
自分を表すはずの自己PRに「私」が表れないようでは、相手に響くことがありません。
ただ、
「そうは言っても『私』が表れるものと表れないものって、具体的にどう違うの?」
とお思いになられた方もいるでしょう。
そこで、この記事では具体例を用いて「私」がない自己PRと「私」のある自己PRについて説明します。
(この記事では、志望動機も含めた「自分を押し出す一連の表現」を自己PRと定義しています)
例①Aさんの「私」がない志望動機
ここに、グローバル展開をしている架空の大手メーカーX社があるとします。
X社では途上国における貧困をなくすことを企業理念に掲げ、近年はアフリカへの設備投資・開発支援を積極的に行っています。
就活生のAさん、Bさんはともにアフリカの貧困に対して強い問題意識を持っており、X社を第一志望としていました。
二人とも有名大学に通っており、コミュニケーション能力も高め。
ただ、Bさんと比べ、Aさんは真面目なものの少し理屈っぽい性格であるという違いがありました。
ある日、無事に書類選考を通過した日二人は面接に呼ばれ、定番とも言える質問をされました。
「では、あなたの志望動機をお教えください」
Aさんの回答は次のようなものでした。
Aさん「発展途上国は貧困が深刻化しており、教育どころか食べる者さえない子どもたちが何千万人といる。自分は『子どもたちに平等な教育の機会を与えたい』と強く考えている。しかし、現地で教育を行うためにはまず経済を立て直すことが不可欠である。そのため、○○という強みを持つ御社で途上国支援に携わり、この問題を解決したい」
志が高く、立派な志望動機を持っている。それに、X社の強みも事前に調べてある。
このAさんの自己PRは優等生的で、一見問題ないように見えます。
しかし、この自己PRを良い PRと思った方は注意が必要です。
このPRのまずさに気づくためにも、次にBさんの回答を見てみましょう。
例②Bさんの「私」がある志望動機
Bさんの回答は次のようなものでした。
Bさん「高校時代にアフリカへ行って子どもの貧困を目の当たりにして衝撃を受けるとともに、『自分は恵まれている』と痛感した。そこで、『そんな自分だからこそできることがあるのでは』と考え、大学入学後はゼミで開発経済学を学ぶとともに、現地でのマイクロクレジットを行う企業で二年間インターンをしていた。その経験から、社会に出ても途上国支援に携わる仕事をしたいと思い、○○という強みを持つ御社で働きたいと考えている」
先ほどのAさんの志望動機と比べれば、一目瞭然でしょう。
Aさんの志望動機には、強い想いはあるもののそれを裏付ける経験・行動がありませんでした。
Bさんの志望動機には、強い想いに加え、その想いを裏付けるような具体的な行動があります。
この違いは決定的なものです。
なぜこの違いが大事なのか、それは人事の視点からすると見えてきます。
「ほんとかよ?」と疑われるAさんと、「もっと聞きたい」と興味を惹くBさん
人事の視点からしたとき、志望動機を聞く一番の理由はミスマッチがないか調べることです。
優秀そうな学生に見えても、本当に入りたいと思っているのか、入ったとしてもすぐに辞めないか、人事はそれを見極めて選考の合否を決めなければなりません。
大量の内定辞退も、早期離職も企業にとっては大きなコストとなってしまうからです。
そのため、企業は就活生に対して志望動機を訪ねることで、「本当にうちの会社に入りたがっているのか」を見極めようとしているのです。
こうした人事側の視点から、AさんとBさんの志望動機を見てみましょう。
まず、Aさんの志望動機は一見まともに見えても「私」が全く入っていません。
なぜ「平等な教育の機会」を大事だと思っているのか、そもそも本気でそう思っているのかが全く伝わってこない志望動機となっているのです。そのため、聞いている方としては「お前本気でそんなこと思ってるのかよ?」という感想を持つことになります。誰にでも言えてしまう内容であるため、キャラが全く見えてこないのです。
一方、Bさんはなぜそう考えるようになったのか、そして実際に「途上国をどうにかしたい」という思いが経験で裏付けられている志望動機となっています。
すると、聞いている側としては、「面接用のきれいごとじゃないか『本音』に少し突っ込んで聞いてみよう」「熱意はわかるけど能力・適正があるか聞いてみよう」「この子がやりたいこととうちでやれることにミスマッチがないか確かめよう」と、建設的な方向で深堀りが進むことになります。そこで面接官が「なるほど」と納得・共感できる話をできれば理想的な自己PRと言えるでしょう。
「ミスマッチではないですよ!」というメッセージを人事に送ろう
企業にとっては、ミスマッチ採用を避けたいという思惑の元で志望動機を訪ねています。
裏を返せば、就活生は「ミスマッチではないですよ!」ということを説得的に伝える必要があるということです。
そして、自分の言葉に説得力を持たせるために重要なのが自分固有の経験、特にコストを費やしてきた活動となるのです。
これを理解することが「スベらない」自己PRをする上で非常に大切となってきます。
自己PRでは「自分にしか言えない」ことを語るのが大原則となります。
「スベる自己PR」とは、抽象表現ばかりが並んでいたり誰でも言えてしまう「コピペ可能」な内容になっているPRです。
本記事では主に志望動機に関することを取り上げてきましたが、それはガクチカでも同じことです。マニュアル本に載っているような「いわゆる就活生」が話しそうなバイト話・サークル話はできる限り避けるべきと言えます。題材はバイトやサークルだとしても、他の人にない切り口で自分なりの経験として昇化させる必要があるのです。
自分にしかない経験で論を補強し、自分の言葉で語る。
これだけで、あなたの自己PRは劇的に生まれ変わります。